【ネタバレあり】映画『ミッドサマー(2019年)』あらすじ・考察・感想
2019年に話題となった映画のひとつが「ミッドサマー」です。本作が劇場公開されたときには何度も見た!という声も多かったため、気になっているかたも多いでしょう。
「ミッドサマー」は賛否両論ある映画です。
本記事では、「ミッドサマー」のあらすじ・考察・感想をまとめました。若干ネタバレや劇中の描写を含みますので、ご了承ください。
『ミッドサマー』のあらすじ・概要
心理学を学ぶ女子大学生・ダニー。恋人のクリスチャンはダニーと別れようと考えているものの、パニック障害を持ち家族全員を悲劇的な事件で失ったダニーを切り捨てられない。 やがてクリスチャンは、友人のマークやジョシュとともに、友人・ペレの故郷であるホルガ村を訪れようとする。計画を知られたため、クリスチャンはダニーにも声をかけ、一行はホルガ村を訪れるが……。 |
『ミッドサマー』は、アリ・アスター監督によるホラー映画です。公開から数年が経過しているため、すでに視聴済みのかたも多いでしょう。
アリ・アスター監督と言えば、このブログでも過去に紹介した、『ヘレディタリー/継承』で長編映画監督としてデビューした人物です。
字幕付きの予告動画もありますので、チェックしてみてください。
原題は「Midsommar」で、スウェーデン語で「夏至祭」という意味です。
北極圏で白夜が起こるのは、ちょうど夏至の前後。
映画では、白夜が続くスウェーデンで行われる、宗教的な奇祭が描かれています。
同じように白夜の街を舞台にした2002年の映画「インソムニア」を彷彿とさせる部分もどこかにありました。
「インソムニア」では、アル・パチーノ演じるドーマー刑事が白夜により焦燥していきます。
「ミッドサマー」の主人公ダニーは、パニック障害を抱えており、双極性障害を持つ妹の言動に振り回されていました。ネガティブな方向に感情を動かされると発作的症状に見舞われるため、ダニーは薬を飲んでいます。そして妹が両親と無理心中をしたトラウマにより、状況はさらに悪化していくのです。
そんなダニーがホルガ村に行き、夏至祭に巻き込まれるところから物語が始まります。ホルガ村の人々はダニーたちを暖かく迎え入れますが、それには大きな目的があるのでした。
映画『ミッドサマー』は賛否両論
「ミッドサマー」公開後、実に多くの考察や感想が飛び交ったものです。感想は賛否両論でした。
- とても無理
- 生理的に受け付けない
- 心が洗われるようだった
- すごく良かった
なぜ大きく意見が割れることになったのか、それは、見る人の状況や心境でしょう。私は比較的見たまま受け止めるタイプなので、どちらでもない、というところです。両方の考察やレビューを複数読んだうえで映画を見たので、それぞれの「考察」について簡単に考えてみます。
「ミッドサマー」に魅了される人々
ミッドサマーはショッキングな映像があるものの、多くの支持を受けています。その支持の理由として考えられるのが、村人が持つ独特の死生観や、幻想的な映像です。
ホルガの死生観では、人生は4つの季節に分かれていて、その終わりが72歳となっています。72歳になった老人は自ら命を絶ち、新たな命へとつないでいくイメージです。そんな表現をすると綺麗に見えるでしょう。しかし、72歳の老人が迎えるのは壮絶な死で、ダニーたちは動揺を隠しきれません。おそらく見た人の多くが、このシーンでは何らかの衝撃を受けたのではないでしょうか。
それでも癒やしだと感じる人がいるのを、不思議に思う人もいるでしょう。最終的なゴールはともかく、ホルガ村では全員が個を捨て家族としてすべてを共有し、生きていきます。(すべてかは不明としても)セックスすら儀式として、他の人間が見ている前で行うのです。誰かが叫んだら叫ぶ、誰かが泣いたら泣く……。
たとえ形だけだとしても、苦しいとき同じように分かち合う相手がいたら?全体に従って行動すれば個人として独立する必要がないとしたら?普段なら「そんなものはイヤ」と思うかもしれません。ただ、本当に孤独でつらい状況なら、魅了されるのも無理はない気がするのです。
ただし、この図式にハマるということは「アプローチ次第でカルト教団に取り込まれる可能性がゼロではない」とも考えられるかもしれません。
「ミッドサマー」を嫌悪する人々
絶賛する人がいる反面、嫌悪と言っても良いレベルで酷評する人も多いのが、映画「ミッドサマー」です。
- 音
- 表情
- 仕草
- 視覚効果
「ミッドサマー」は、これでもか、というほど揺さぶりをかけてきます。「グロ平気」=「ミッドサマー平気」にはならないのも納得です。特に精神面で大きな不安を抱えているのなら、強い影響を受ける可能性もあるでしょう。
たとえば主人公のダニーが、恋人クリスチャンに繰り返し繰り返し電話を掛けるシーンがあります。友人たちは「うわやっば!」という反応をしていますし、クリスチャンも迷惑顔です。この繰り返し電話をするダニーの不安に勝てない状況を見て、分かると感じる人も多いはず。
このままではクリスチャンとの仲が終わると理解していても、ダニーは止まることができないのです。
- 嫌なのに断り切れない
- 不安が消えない
- 悪いこと続き
- 疎外感
ダニーが抱えているのは、上記のような状態です。似たような状況にあるなら、視聴により強い嫌悪感・不快感・恐怖を感じることもあるでしょう。
「ミッドサマー」はグロい?
結論からいってしまうと、「ミッドサマー」はグロ要素が強めです。特に、老人が自死する場面は、慣れない人にとっては強烈でしょう。その部分だけ見ると「ヘレディタリー」よりもグロさは強いと感じます。食事でも、少し不快な表現がありました。
全体的にグロいというわけではありませんが、グロ耐性が強くないかたには強くおすすめできません。また、「ミッドサマー」は性的描写もありますので注意してください。
『ミッドサマー』感想
何度か視聴しましたが、話題になるのもわかる作品です。個人的に、唯一きつかったのは、「植物が呼吸をしているようにうごめくところ」でした。悪い夢を見ているような気分だと感じたものです。
クリスチャンやジョシュ、マークについては、私には理解できません。ただダニーの気持ちは、分かる気します。ダニーより症状は軽いものの私もパニック障害を持つ身です。そのため、不安に弱いという大きな弱点があります。ただ「ミッドサマー」自体によっての精神的な影響は受けませんでした。
どういうわけか、ラストシーンの音楽が犬の恐怖を煽ったようです。ラストになったとたん、犬が部屋の隅に隠れて動かなくなりました。
とにかく演出が細かくて、随時不安を煽ってくる映画です。見て癒やされる人もいるだろうし、撃沈する人もいるでしょう。そういう類の映画です。21世紀最高のホラー映画と称されているのが同監督の『ヘレディタリー/継承』とも通じる要素があります。不安の煽りかたが、とにかく絶妙です。
受け手側の状況により、どう感じるかが大きく違う映画であることは間違いありません。
「ミッドサマー」基本情報 |
公開:2019年 |
監督:アリ・アスター |
出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナーなど |
時間:147分 |
映画『ミッドサマー』はAmazonPrimeで配信されています。→ミッドサマー(字幕版)
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